百瀬寿展 MOMOSE Hisashi 1970-2010

《Eleven Strips: Pearl Blue, Yellow to Rose》1989年 岩手県立美術館蔵
1944(昭和19)年、北海道札幌市に生まれた百瀬寿は、北海道教育大学旭川分校、岩手大学専攻科で学び、卒業後は岩手県盛岡市を拠点に、色彩のグラデーション(諧調)をテーマとした作品の制作を行っています。
百瀬がこのテーマを見出したきっかけには、シルクスクリーン(セリグラフ)との出会いがありました。学生時代に油彩画を制作していた百瀬は、60年代末から絵筆で「描く」行為から次第に離れ、伝統的な様式や美の規範にとらわれない新たな表現を求めて、この技法に取り組み始めます。
70年代に入ると、版を用いずにスクリーンの上からインクを直接摺り出し、色彩の「ぼかし」だけで構成される「版のない版画」のスタイルが確立します。透明度の高い蛍光インクを摺り重ね、深い色彩のグラデーションを作り出した作品は、この時期の代表作です。この「ぼかし」による色彩のグラデーションは、80年代以降の、エアー・ブラシやスキャナグラフ(ネコ・プリント)を用いた大型作品や、手漉紙を用いた両面刷りの作品へと展開していきます。
80年代後半からは、シルクスクリーンと並行して、キャンバスの上に和紙やネパール紙などの手漉(てすき) 紙を貼り並べる平面作品が作られるようになります。着色した正方形の紙を規則的に並べて上から薄紙を貼り重ねたり、裏側を着色した帯状の手漉紙の繊維を表から少しずつ擦り剥がしたりすることで、地色の透け方によるグラデーションを作り出したこれらの作品には、色彩のみならず、支持体の構造にもグラデーションが生まれています。「描かれざる絵画」とも評されたこのシリーズでは、90年代以降、アクリル絵具に加え、岩絵具や金銀プラチナの箔などを用いることで、色彩のバリエーションを広げる試みも行われています。
また、シルクスクリーンを始めた頃から「『絵画』と同等に勝負できるものを作りたい」と、大画面への志向を持ち続けていた百瀬の作品は、この手法によってさらなる大型化を遂げ、2メートルを越す大型作品が次々と制作されました。近年は、東京ミッドタウン(東京・六本木)や、いわて県民情報センター「アイーナ」(盛岡市)などにおける大型インスタレーションや、蛍光塗料を塗った複数の網を重ねるインスタレーションなども手がけられています。
本展は、70年代以降のグラデーション作品を中心に代表作約 110点を展示して、その比類のない豊かな色彩表現の展開を辿ろうとするものです。また、本展では、縦3メートル、横6メートルに及ぶ超大型の平面作品や、最新作となるインスタレーションの初公開も予定しています。
2010年9月11日(土)~11月23日(火・祝)
9:30~18:00(入館は17:30まで)
会場:岩手県立美術館 企画展示室(岩手県盛岡市本宮字松幅12-3)
入場料:一般/前売650円(当日800円)、高校・学生/前売400円(当日500円)、
小・中学生/前売250円(当日300円)
お問い合わせ:岩手県立美術館(tel. 019-658-1711)
※企画展の観覧券で常設展もご覧になれます。20名以上の団体は、前売料金と同額で観覧できます。当日券の場合には療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方、およびその付き添いの方に割引制度があります
※月曜休館
百瀬寿/MOMOSE hisashi
北海道札幌市生まれ。1967年に北海道教育大学旭川分校を卒業し、翌 68年岩手大学専攻科修了。現在も盛岡在住。1977年の「第 2回世界版画展」(サンフランシスコ近代美術館、U.S.A.)でエディション買上賞を、その後も 1996年の「第3回高知国際版画トリエンナーレ展」(いの町紙の博物館、高知)での大賞など、多数の賞を受賞している。近年では「日仏―国境なき芸術」展(2000年、フランス国立パリ造幣局、パリ、フランス)、「HANGA東西交流の波」展(2004年、東京藝術大学大学美術館、東京)、「黄金の美術館」展(2006年、釧路市立美術館ほか巡回)など多くの展覧会に出品。2006年、いわて県民情報交流センター「アイーナ」から、また 2007年には東京ミッドタウン・ウエスト、ミッドタウン・タワーからの依頼制作を精力的に行い、同年には第60回岩手日報文化賞を受賞。そのほか、「MOMOSE」百瀬寿展(2007年、ART Space旧石井県令邸、盛岡)、百瀬寿の「百色百点」(2008年、石神の丘美術館、岩手町)など個展・グループ展を多数行い、現在も国内外で活躍中。






